■造形が孕む気韻こそが
暗闇から蟻顔が浮かびあがり、一気に迫ってくる。その顔
は凛々しくも哀しくも見え、そのうえ威厳さえも備えている。
奥田さんは毎日のごとく蟻と睨めっこしながら、日々新たな
感動を覚えるのだ。その感動が、堅固でゆるぎない造形に
ムーブマンを喚びおこし、画面に呼気、吸気(気韻)が生まれて
くる。それこそが蟻顔が抱えているおのずからなる生命であり、
魂であろう。
コロナ禍のいまを生きる奥田良悦の画魂の世界であろう。
美術評論家 中野 中
蟻顔三態 S25